いのうえ歌舞伎號「IZO」@シアターブラバ

軽くネタバレしてるんで、未見の方(見る予定のある方)はごらんになりませんように。
見ない方がいいよ、というレベルじゃなくって、見ないでください。
大したこと書いてないけど。書けないけど。
理不尽さ大賞は坂本さんの「ノーマンズランド」には負けますが、
それでもやっぱり理不尽……
理不尽っていうか、なんだろうなあこの無力感。
「ノーマンズ〜」はスタンディングオベイションな事自体に怒りまくってましたから、
カーテンコールのお茶目徳馬に笑えた今回は、かなりマシなんだろうけど。

もうなんつか、悲惨すぎて感想述べる言葉もございません。
ラスト5分で、どんでん返しじゃないけど、
「ひかり」が差し込んでくれたので まだ気持ちは少し浮上。
あの高知お裁きシーンからラストの満作の花びらが吹雪かれるシーンまでがなかったら、
手に持ってたオペラグラスを田辺誠一に(てか武市)に投げつけていたかもね。
剛ちゃん演じる以蔵さんがああいう風に生きるしかなかった時代の流れを
かなり丁寧に見せてくれるので余計にやるせなさ満点。
どうしようもなかったのはわかるんだけど、
あの時におじちゃん(=ミツちゃんの)の言葉の意味が分かっていたらとか、
龍馬にもっと感化されていたらとか、おミツちゃんと逃げていたらとか、
勝先生に諭されていたらとか、そんな事ばっかり。


ていうか、そもそも武市さんにそこまで心酔するのがわかんないもんだから、
そんなうさんくさいヤツの為に、以蔵のおばかー!!!(涙)
と、いう感想に始終してしまいます。
武市さんなあ。そこまで心酔する人柄なのか。
わからん。ほんまにわからん。
けど、今まで見た漫画や小説の中では、
たいてい人格者として描かれていたので
自分の行くべき道をきっちり持った見通しの利く賢い人だったんだろう。
田辺誠一だからか。そうなのか。
確かにいくらなんでも存在感薄すぎるだろう、誠一。
どうしてすぐに舞台から消えてしまうんだ誠一。
2階から見てたのですが、森田さんの方が遙か大きく見えたよ、誠一。
基本的にわしの幕末の知識は「新選組!」と
他ちろっと漫画類で培ったものしかありません。
以蔵以上に「そ、尊皇攘夷ってどっち?何?名詞?」
「さばく……ってどっちなんだ?何してる人たちだっけ?」状態の人間は
武市半平太」って言われても、「あ、実在なんだこの人」
「そもそも高知出身なんやー」ぐらいな知識しかあらへん。
だからこそ、もう少し説得力が欲しかった。
最後の最後まで、以蔵は直接「武市先生の命です」なんて証言しなかったやん。
その結びつきの肝とか、心酔する理由とかがいまいち感じられないままやったから、
そりゃオペラグラスも投げたくなります。
てめーのせいで以蔵が(怒)!みたいな。
誠一、頑張れ。
上から目線(2階からだけに)で応援してみました。



他の人物達が大変魅力的だったので
余計に「おいおいおいー」っていうのもあるんでしょうね。
キモカワ池鉄さんが演じる龍馬は素敵でした。
奔放でお茶目で懐深く、視野も広い。昔馴染みの以蔵を見る目も暖かい。
映像でお見かけする時はあまり何も感じてなかったんやけど、
ああこういう人なのかと。
しょっぱなの出がもうすでにずるいー、あれ。
勝さんもかっこよかったなー。
時代を超えていく軽やかさがにじみ出てました。
基本的にいつも軽いけど、粟根さん(笑)。
それがいい風に「勝海舟」っていう人物の魅力と合致。
基本的に私、勝海舟っていう人が好きなんだろうなあ。
脳みそが柔軟にすぎるところとか(身体も柔らかそう)、
どこかはしこいとことか(※当方イメージ)。
けど、勝海舟って基本的に演じるアプローチ一緒なんかな。
新選組!」の時の野田さん演じる勝さんと重なった。
軽やかさはもちろん、しゃべり方も。
ああいうしゃべり方やったんか、勝海舟(しらんて)。
野田さんもかっこよかったなー。ちょっと脱線・思い出しうっとり。
あと、意外どころでは戸田恵梨香嬢がよくって。
可愛いわ、声はいいわ、美味しい役どころだわ、可愛いわ(二度目)。
だんな置いて以蔵ちんとこまで来たのはどうなんだと思ったのだけど。
まあいいや。可愛いから。
存在自体が可憐だ華だっていう事は、何よりも勝る宝だ。


森田さんは言うことなし。これからもがんばってください。
舞台に立っているところを見続けたい役者さん。
テレビで使ってくんないんだったら、舞台にガンガンでなはれ!!
けれどもNHKにはまた出て欲しいなあ。スミ消せ、スミ!


休憩あわせて3時間ちょいの舞台、正直耐えられるもんかいなー
と思っていましたが、大丈夫でした。よかったよかった。
かといって、何度も見たい舞台でもなし。
私ん中じゃ「IZO」は、「WINDS OF GOD」(あらすじ)と「蒲田行進曲」に並ぶ、
見ていてもう見ていられんくて、早々とどっかに行きたくなる、
いたたまれなくなってしまうお話です。痛々しすぎる。悲惨すぎる。
次は思い切りハジけたタイプの、
それこそジン先輩のような作品がいいです。
楽しく、微笑ましく見られるやつ。
以蔵さんが「実在」だっていう、もう動かしようのない「歴史的事実」
であるっていう救いようのなさが、
よけいに見てて辛いんだなー。自分、どうしようもないもの。
そういう意味ではやっぱり、
「ノーマンズ〜」より「WINDS〜」に似ている。
んで以蔵ちんの辞世の句がこれまた。
  
  
  
「君が為 尽くす心は 水の泡 消えにし後ぞ 澄み渡るべき」
  
  
  
切なすぎるー。
単純解釈でいいのかな、けどよくわからん。
「自分が消えた後は、平穏な世の中になるだろう」っていう解釈なの?
それとも「平穏な世界が待っている」っていう解釈?どっちなんだろう。
ま、辞世の句に対して解釈もとめるのもかっこ悪い話ですね。
しかしこの心境って、剛ちゃん演じる以蔵のラストシーンそのものじゃないですか。
赤い血で染まったこの身を、黄色い満作の花で隠して欲しいっていうラストの台詞。
もちろん狙って演出されてるんだとは思うんですが。
むむむー。せつねー。
パンフレット買えばよかったかなー。
今更ながら、幕末時代の本を読みたくなってきました。
やっぱ司馬先生から入るべきか。
  
  
  

人斬り以蔵 (新潮文庫)人斬り以蔵 (新潮文庫)
(1969/12)
司馬 遼太郎

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……しかしこの辞世の句の前半……。
やっぱりおみつちゃんを殺す必要はなかったんじゃないの(涙)?