「血は立ったまま眠っている」@シアターブラバ

昨日行ってきました、シアターブラバ。
途中で明らかに飽きた→苦笑い(うざい感じで)になっていた自分に苦笑い(うざい感じで)。

これでチケット代が9000円でしょう?森田さんに5000円、ミチロウ伝説に4000円という感じでしょうか。

あの人、歌うまいね、どなたやろ?と幕間に隣のももちんと先輩に話しかけたら、何いうてんねん、ミチロウさんやんか!!!と一斉突っ込みにあいました。え?ミチロウ?あの噂のミチロウ?(※注1)みたいな。どう考えても60過ぎの方には見えなかった。超現役やった。わしらは奇跡を見たのか。だって遠藤ミチロウを見たのって、薄暗い映像の中、狭いライブハウスでバケツの中身をフロアにまき散らかしている映像でしか見たことないもん(これが一番有名か。調べたら映画なのですねアレ)。

伝説、一回私の真横を歌いながら去っていったよ。ギターの音がホンモンやった。感動した!!



あと森田さんが何より輝きを放っていて、うわ本物だ!!!と思いました。
「本物の森田がいる!」の驚きではなく、「本物の役者がいる!」っていう驚き。あれだけ声の通る人だったっけ?あの装飾に満ちたせりふを実感ともなって話せる人だったけ?あれだけの感情をさらけ出せる人だったっけ?うん確かにそうだったかもしれんが、今回が一番!だと。
もっともっと役者やってる森田剛が見たいです。椅子に座ってとつとつとラブレターを読み上げる森田さんだとか、生きることに苦悩するデンマーク王子な森田さんだとか、ジン様森田さんとか、なんかもう、いろいろな森田さんが見たいです。とにかく声が綺麗なのにびっくり。そんで、その声に綺麗に感情が乗っていることに二度びっくり。寺山修司なせりふを語る森田さんがこんなに気持ちのいいものとは。



しかしながら。
森田さん出てる以外は、何がどうなって素直に見られないんだろうと、そのことばっかり考えながら見ていましたwww 元々アングラ臭なものは苦手だし、カクメイとかガクセイウンドウ・アンポモンダイとかジエイタイなんだとかもピンとこないし、第一、この時代と現代の自衛隊のあり方自体も捉え方は違うから、寺山を今の時代の若人に見せるのが無理があるんじゃないだろうか?理解が出来ない自分が悪いのか?共感できない自分の好み、感性の問題か?

・・・とも思いかけたんですけれども、お話、もっと言えば台詞や会話自体は途中から気持ちよくなってきたんですよね。予想GUY。特に森田さんの台詞運びがとても美しくって、もういっそ森田さん一人芝居でよいかと。森田さん軸に話が転がり始めると共感、というより理解出来る部分もあるし。

でもって最後まで見てようやくはっきりとわかりました。声を大にして言う。



これ、演出がアカンやろ。



ああもう、これが言いたくて言いたくて仕方なかったです(笑)。
誰の何が悪くてこんなんになったの?ニナガワ?それとももっとえらい人?誰か教えて!!
私、お芝居大好きなほうの人間だと思いますけど、心から幸せに思いました。
生まれて初めてみたお芝居がこれじゃなくってよかった(安堵)。こんなん体験学習とかで見せられたら、一生芝居見なくなる人間になるに違いない。生舞台大嫌いになるわ。

以下、ネタばれなので気をつけて下さい。




ちなみに(※注1)について。
先だって見に行ったビークル・ヒダガオメンバーのイベントにてヒダカ息子が誕生したことが発表されました。ヒダカ息子の名前は「ミチロウ」だそうで、たぶんこのミチロウはこちらのミチロウさんからの・・・だと推測される故、「タイムリー!」とわれらの中で話題に。

 

 

何があかんて、最大ダメなのあの休憩の入り方。なんだあれ(呆然)。あそこで話が終わったんかと思ってびっくりしましたよ。誰だよあそこで休憩入れましょうとか言い出したの、責任者出て来い。

百歩譲って、あの休憩に必然性があったのなら、是非説明をお願いします。私は観客のひとりとして主張いたしますが、物語を精一杯楽しむためにはあそこで休憩は絶対入れてはいけないと思います。

だって休憩あけてすぐに姉ちゃん死ぬって!(再度呆然)

何かの冗談(夢オチとか)かと思ったんだけど、そのまま話が進行していくし森田さんなんでか必死だしで、こちらは座席に撃沈。いやー死んだ死んだ。まったくなにの盛り上がりも意味も演出もなしに姉ちゃん死んじゃった。この世でもっともカタルシスのない死亡シーン。撃たれてからも10分は踊り、最後に「フランス万歳!」と叫んでお亡くなりになったオスカル様を見習え。

この死亡シーンだけでも「休憩あけていきなり何事?」なのに、その後いきなりニナガワ美学の登場ときたものだから、本気で気が遠くなりました。あれ(赤いテープを口からビヨヨーン)をやっていいのは平幹二朗さんか白石加代子さんだけだよ。この演出は確か「王女メディア」でも見た記憶がありますが、あっちは納得できたもん。メディア、化け物だったし(少なくとも舞台上のメディアは化け物だった・・・w)、女の情念がオドロオドロしく表現された、赤色が圧倒的にインパクトのあったシーンだった。

けれども美しい革命戦士も夏子18歳もやってはいけません。もう少し気分が盛り上がっているときだったら受け入れられたのかもしれんが、いやいや・・・・・・つかゴムパッチン・・・・・・出川先生・・・。

別段あざとく泣かそうとする演出もいらないんだけれども、だいたいどこで何をどうやろうとして死んだのかがわからないからあっけにとれるしかなく。
「灰男さんと間違えたんだ!」ってそれぐらいは説明いただかなくてもわかるのですが、そうじゃなくってさ、良くんが灰男さんを殺そうとした決死までの葛藤はどこにあったの?休憩中にあったんでしょうか?楽屋でだけ?客席非公開なの?そこが一番大事だろうて。ああ、せっかく美しい男子二人が揃っているのにそこになんのドラマもないの?トイレ休憩で消えたの?そんなんだったらトイレ休憩なくてよかったのに(泣)。

しっかしよく考えたら夏子18歳、2幕目は一言もしゃべっていらっしゃらないのではないのでしょうか。さらば夏子。



で、次の疑問。最大のクライマックスである良の「気づき」のシーンが

ずっと舞台上手で固定ってどうなん?

↑これが見終わった後の最大の疑問でした。首吊り人形をつるす位置があそこしかなかったの?とすら思えるなんだか雑い舞台の使い方だなと。これ、見た位置で感想が変わるとは思います。自分は上手側で見ていたから余計にそう思っちゃったんだとすると、口惜しさすら感じます。

なんでーなんで「俺は自由に恋をしていたのか!」っていう素晴らしく美しい台詞が、あの位置なんだよー(涙)。インパクト半減だよ!!!世界のニナガワってスケール感のある演出が売りの方だと思っていたんですが、セットが上か下にふられるだけで、あんだけちっこい世界に客席から見えるんだと、とても勉強になりました。ニナガワ先生ありがとうございます。

「俺は自由に恋をしていたのか」っていう台詞は、少なくとも今現時点で自分が位置する場所よりは高みにある何かに彼が気づいた瞬間だと思うんですよね。そこでスコーンって抜ける何かが欲しかったんですけれども、ダメですか先生。ブラバの壁をぶち抜けばよかったのに。

・・・気づいても結局、良は「あのレベルだ」っていう表現なら、まあありっちゃあり?それでも見づらいよなとは思う。
だいたい刑務所(?)シーンと良のシーンがリンクしているように見えなかったなー。単純に全部一緒の鍋の中につっこんでぐだぐだ炊いただけの水炊きみたいでさ。
もう少し整理してくれたら、お豆腐も綺麗なままにすくえるのに・・・っていう感じ。この場合、「綺麗なままのお豆腐」が良たんの最後の美しい台詞だと思ってくださればよいかと思われます。





あとは客席にいる観客の半数は突っ込んでいたと思うのですが


「夏子、18歳」


って誰が?!・・・と。
しのぶさんは悪くない。絶対悪くない。キャスティングした責任者、出て来いや・・・・・・(涙)。
しのぶさんは本当に声も素敵で、小さい声も情感を伴ってあの大きなホールに響いていて、松たかちゃんをはじめて生で見たときと同じ衝撃(能力というものにどこまで血は関わっているのかというDNAな感想)を受けて、うわ素晴らしい女優さんをまた見つけたぞ!っていう気持ちになったんですが、いかんせん「夏子18歳」インパクトが強すぎて。

・・・こんなところでインパクト、いらんし(涙)。
どんなに年齢を重ねても「18歳です」と嘘をつける女優さんがいらっしゃるのは知ってるし(例:宮沢りえ/深津絵里 等)、実際にそう見えてくるから「女優すげいな」という感想が持てるのですけれども、それは絶対寺島しのぶという女優さんの持ち味ではないわけで。
あのレイプのシーンですらひたすら生々しいだけでさ・・・・・・痛々しさが足りない・・・逆にいつ夏子から乗っかるのかとすら。くぼってぃが食われるー。

とても美しい声で美しい台詞と非常にわかりやすくお話いただいていたので、非常に・・・なんていうか、しのぶさんの演技は素晴らしいのに、ここは確実に寺島しのぶじゃねえだろう!という結論にたどり着くという、非常にねじれた結論に。とほほだよ。一番の被害者はご本人ですね。こんな感想でごめんなさい。




灰男@クボッティは、非常に美しい革命戦士で、そりゃ良たんもほれるよね!夏子18歳もイチコロだよね!と納得の美しさだったのですが、いかんせん美しいお顔と美しいお姿に、美しい詩的な台詞を掛け合わせると「非常に棒」という答えが出てきてびっくりしました。ソウダッタノカー。

・・・ってそうじゃねえよ。良たんと夏子姉弟のやり取りはあんなにかわいらしく微笑ましいのに、彼が話し始めると途端に退屈だお★状態。良が憧れ、惚れるだけの美しさには断然説得力があったので、ここももうちょっと見せ方でどうにかならんもんやったんかなあと。



良の「じゆう」への憧憬、良が灰男にほれてる幼いかわいらしさ、姉と憧れの男の関係に(弟としても革命家としても)嫉妬する感情、灰男を殺せと焚きつけられる緊迫感、銃の重み、猥雑さの中にある美しさ、最後の透き通るような希望の言葉、そしてダイナマイトの響きに目を見ひらいて全てを停止させる良の絶望・・・・・・


なんてたくさん見所があったはずなのに、なんだか文句ばかりで申し訳ありません。もうひとつ文句言うなら、少し削ってでも2時間にまとめて下さったほうが(ついでや言うたれw)。



しかし寺山修司の「詩」を語る森田さんはとても美しかった!あんなに美しい「声」を持つ俳優さんだったんだね。ずっと聞いていたかった。森田さんの未来が本当に本当に楽しみです。次はいつじゃー。



原作戯曲を買おうと思ってたのに、うっかり購入してくるの忘れちゃった。